CD-Rの前書き
ある時、ふと「BUCK BEAT」とインターネット検索してみた。100万件以上もヒットしているけどどうやら自分たちのことは何も出てこない。思ったよりしぶとく生き残った「BUCK-TICK」(名前は似ているが向こうはヴィジュアル系)の作品販売とか再結成のブログ記事が多いのだ。「バックビート」とカタカナにするとまた様子が変わる。なぜなら、自分たちの解散後にビートルズ関係の映画が「BACK BEAT」の題名で出てしまうし、京都や神戸に新しく「BACK BEAT」というライブハウスができているし、「エディ田中とバックビート」なんていうおじさまダンスバンドまでできてしまったらしい。 「俺たち、多摩地区とか横浜とか渋谷とか地域限定なら少しは有名だったのになあ…」なんて寂しさも感じつつ、形のあるものを何も世に残せなかったことをもったいなく感じ始めたのだ。 当時のスタジオ録音やライブのライン録りの音源はほとんどカセットテープ。DATもあるがこれは再生デッキが高くて買えなかったので今も人に預けたままだ。当時の新しい録音媒体・CDを自主制作で出せたのはレコード会社ともめた実力派の吉田美奈子(『BELLS』がCD自主制作第1号)くらいで、アマチュアにはとても無理だった。 ソノシートのレコードなんかを作るバンドもあったがそれだって高かった。100枚50万円?という相場を聞いたような気がする。スタジオでデモテープを数曲録音すればそれだけで10万円以上かかったからその後の経費など無理。貧乏が売り物の我がバンドは安いカセットテープにダビングして2曲入り300円くらいで販売していた。「形に残す」というよりはシングル感覚の「試供品」のようなものだった。 何よりも「メジャーデビュー」する気でいたので、自分たちでお金を出してまで「形を残そう」という意思がなかったのだ。 そんな昔のマスター音源が劣化していくのも悲しいのでMDに落としておいたのだが、これまたなんだか淡白な感じになる。小さなデジタルオーディオプレイヤーにアナログ入力してみたが、いざパソコンに取り込んでみると音ヤセしてしまいギターの音なんて違う楽器のようになってしまう。スネアドラムなんて「パシャ」と紙をたたいているようだった。 それが、たまたまハードオフなるリサイクルショップで、録音できるCDデッキを発見。これならいい音で昔のテープがよみがえるのでは…とダビングを試みる。ここでCD化したものをパソコンに取り込みデジタル化し、さっきのデジタルオーディオプレイヤーに落として聴くと…これなら大丈夫だった。自分が演奏者だという実感がなくなった今聴いてみると、結構いいじゃん(笑)。年月がたって、何事もそう恥ずかしくなくなった今しかない! 時代に流されない曲なら20年たっても聴けるはず…と今回の企画につながったのである。 ただ、そのCDデッキは原盤と数枚のコピー製作の最中に故障。保障期間内だったので全額返金してもらい、たった1種類のCD音源を残してその役割を終えた(たぶん修理されてまた売られていると思うけど)。 そのせいで、『涙のSay Good-bye』など明らかに音飛びしている部分があっても、もう直せない。この曲については偶然にうまくつながって、変拍子のようなハッとするアレンジになっている。そんな風に原盤に問題がある曲はもうしょうがないのだが、何か他にたくさん不具合を感じたら連絡していただいて、原盤に近いところからパソコンで焼き直したい。(デジタルデータだから劣化していかないつもりでいるが) ついでだが、1989年頃、『Stand Up』は本人たちの知らないところで、FMラジオ(東京FM)の電波に何度も乗っていたらしい。ところが、何度も聞いた友人曰く、「テープが伸びたような感じで、歌にビブラートがかかっていたよ」と。その安いテープの二の舞にならぬよう今回は慎重にダビングをしたが、すべての録音確認はしていないので、後はよしなに…。今回の経費は昔の2曲入りテープ代よりも安く済み、まさに「隔世の感あり」なのだった。 そんなにお勧めかと問われれば微妙な所(笑)だが、このCDが、どこか遠くの知らない街で流れたり、当時生まれてなかった人に鼻歌で歌われたり、昔のお客さんの今の生活を勇気づけたり…そんな風に使われるとすてきである。
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